区分地上権に準ずる地役権の目的となっている宅地の評価

地役権が設定されている土地の評価に関する質疑応答事例は、下の通りです。 

◇国税庁質疑応答事例「区分地上権に準ずる地役権の目的となっている宅地の評価」より抜粋
地役権が設定されている宅地の価額は、承役地である部分も含め全体を1画地の宅地として評価した価額から、その承役地である部分を1画地として計算した自用地価額を基に、土地利用制限率を基に評価した区分地上権に準ずる地役権の価額を控除して評価します。この場合、区分地上権に準ずる地役権の価額は、その承役地である宅地についての建築制限の内容により、自用地価額に次の割合を乗じた金額によって評価することができます。

(1) 家屋の建築が全くできない場合……………50%と承役地に適用される借地権割合とのいずれか高い割合
(2) 家屋の構造、用途等に制限を受ける場合…30%

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電力会社との契約書上「建築禁止」だと50%減額調整が可能か

 評価対象地に高圧線が掛かっている場合、それによる建築制限の程度によって、所定の減額調整が可能であることは質疑応答事例にある通りです。注意が必要なのは、契約書に「建築禁止」とあっても、実際には協議によって、一定の条件のもとに建築が可能になることもある点です。そのような場合は、必ずしも50%減額調整が可能になるわけではありません(東裁(諸)平29-17)。実際の建築制限について、電力会社に問い合わせることが必要です。

契約上の高さ制限と、公法上の高さ制限

 電力会社による高さ制限(上にあるように実際の、です)が、公法上の高さ制限を上回る場合には減額調整が可能でしょうか。具体的には、前者が「20mを超える建築は禁止(20mまでは可)」で、後者が「12mを超える建築は禁止(12mまでは可)」のようなケースです。この場合、送電線の有無にかかわらず、評価対象地上には12mまでの建物しか建てられず、つまりは送電線による高さの制約は無いことになるため、これを理由とした減額調整は出来ません(東裁(諸)平29-17)。

市街化調整区域における減額調整

 市街化調整区域はもともと「市街化を抑制すべき区域」であり、市街化区域とは異なります。したがって、山林や農地等のそもそも建築が想定できない土地、あるいは50%のしんしゃくを行う雑種地などについては、本章の減額調整は困難であると思われます(平成10年9月30日裁決)。また、しんしゃく割合が30%の雑種地については、送電線があることによる制約の程度と比較の上、減額調整を検討することになると考えられます。

◇平成10年9月30日裁決
本件高圧線下土地については、いずれも被相続人とW電力との間で送電線路架設等に関する契約が締結されている事実は認められるものの、いずれも市街化調整区域内に所在することから、自用地部分の山林と同様の山林として利用することについての立体利用阻害は認められないこと、また、区分地上権に準ずる地役権が建造物の設置を制限するものであるところ、市街化調整区域においては、もともと原則として建築物の新築等が大幅に制限されているものであることからして、本件高圧線下土地の評価に当たり、その自用地としての価額から控除すべき区分地上権に準ずる地役権の価額は皆無に等しいものと認められる。したがって、本件高圧線下土地は、その山林の自用地としての価額によって評価することとなる。

追記 高さ制限の把握方法

 高架線下の土地における高さ制限についてです。土地全部事項証明書(乙区)や契約書を見ると、建築制限について「最下垂時における電線から〇m以内」といった表現がありますが、これは我々が評価に際して必要な「地上からの高さ」とは異なります。この地上からの高さを把握する方法はいくつかあるのでしょうが、私は電力会社に電話問い合わせをします。対象地の最寄りの鉄柱には、管轄電力会社の連絡先が書かれていることが多く、そこに地番を指定の上問い合わせれば、地上からの高さ制限(建物は何m以内に抑えなければならないか)を教えてくれることがあります。

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