借地権か賃借権か(自動車学校の主役は校舎かコースか)

 貸し付けられている宅地を評価する際、借地権価格を控除できるのか、単に賃借権価格を控除できるに過ぎないのか、しばしば直面する問題です。

目次

1.借地権の定義

 借地権とは「建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権」をいいます(借地借家法2条)。したがって、賃貸した土地上に建物があったとしても、その賃貸借の主目的が「建物を所有」でなければ、借地権は存在しないことになります。

2.事例

 貸地上に建物があるいくつかのケースを挙げます。それぞれのケースでは、借地権と賃借権とのどちらが存在すると考えられるでしょうか。土地の賃貸借について、「建物所有が主目的かどうか」が論点です。

3.関連争訟事例

(1)平成15年3月25日裁決では、パチンコ店敷地およびその駐車場として利用されている貸地について、建物所有が主目的であるとして、貸地全体について借地権の存在を認めています。
 原処分庁は、青色申告で「駐車場収入」とされていることや建面積が相対的に小さいことから、借地権は駐車場部分には及ばないとしましたが、 審判所は、土地の全部がパチンコ店の経営に必要としています。

(2)福岡地裁平成3年10月15日判決は、自動車学校敷地及び教習コースとして利用されている貸地について、建物所有が主目的であるとして借地権の存在を認めています。

(3)平成12年6月27日裁決は、待合フロア等の建物敷地およびバッティングスペースとして利用されている貸地について、建物所有は賃貸借の主目的ではないとして借地権の存在を否定しています。権利金の授受は無く、契約書上、いつでも解約の申し出が可能とされています。

(4)平成17年5月17日裁決は、中古車業者についてです。ここでは、商談等用建物敷地および展示スペースとして利用されている貸地について、建物所有は賃貸借の主目的ではないとして借地権の存在を否定しています。
 契約書上、建物を建てる旨の文言はあるものの、更新期間は5年であり、永久建造物の建築と建物登記は禁止されております。

 上記争訟事例は、建物所有が主たる目的なのか、それとも従たる目的に過ぎないのか、という点について概ね常識に基づいて判断されているのではないでしょうか。あくまでも私の個人的な感覚ですが(2)について、「自動車学校」という言葉を使うと「建物所有が主目的だろうな」と感じますが、「自動車教習所」というと「建物所有は主目的じゃないな」と感じます。まあ、雑談ですが。

追記
(5)令和2年3月17日裁決(沖裁(諸)令元第4号)は、借地権の存在が否認された事例です。広大な土地が、リース業を営む法人に賃貸されています。その契約書には使用目的として「普通建物所有」とありますが、しかし審判所は、リース商品である建設機械及び車両等の保管が主目的と認定。借地権の存在が認められるためには、単に借地人が建物を所有するのみでは足りず、「借地人の借地使用の主たる目的がその土地上に建物を建造し、これを所有すること」が必要であるとして、借地権の存在が否認されています。原処分庁は、評価通達7ただし書きにより、土地全体を雑種地として一体評価する旨主張しており、裁決ではこれが採用されているように読めます。土地上の各建物合計床面積は144.97㎡と、土地全体(1,497㎡)の1割未満。

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