地積規模の大きな宅地とは
◇評価通達20-2
地積規模の大きな宅地(三大都市圏においては500平方メートル以上の地積の宅地、それ以外の地域においては1,000平方メートル以上の地積の宅地をいい、次の(1)から(3)までのいずれかに該当するものを除く。以下本項において「地積規模の大きな宅地」という。)で14-2((地区))の定めにより普通商業・併用住宅地区及び普通住宅地区として定められた地域に所在するものの価額は、15((奥行価格補正))から前項までの定めにより計算した価額に、その宅地の地積の規模に応じ、次の算式により求めた規模格差補正率を乗じて計算した価額によって評価する。(平29課評2-46外追加)
(1) 市街化調整区域(都市計画法第34条第10号又は第11号の規定に基づき宅地分譲に係る同法第4条((定義))第12項に規定する開発行為を行うことができる区域を除く。)に所在する宅地
(2) 都市計画法第8条((地域地区))第1項第1号に規定する工業専用地域に所在する宅地
(3) 容積率(建築基準法(昭和25年法律第201号)第52条((容積率))第1項に規定する建築物の延べ面積の敷地面積に対する割合をいう。)が10分の40(東京都の特別区(地方自治法(昭和22年法律第67号)第281条((特別区))第1項に規定する特別区をいう。)においては10分の30)以上の地域に所在する宅地
上の算式中の「B」及び「C」は、地積規模の大きな宅地が所在する地域に応じ、それぞれ次に掲げる表のとおりとする。
イ 三大都市圏に所在する宅地
普通商業・併用住宅地区、普通住宅地区 |
地積 | B | C |
500㎡以上1,000㎡未満 | 0.95 | 25 |
1,000㎡以上 3,000㎡未満 | 0.90 | 75 |
3,000㎡以上 5,000㎡未満 | 0.85 | 225 |
5,000㎡以上 | 0.80 | 475 |
ロ 三大都市圏以外の地域に所在する宅地
普通商業・併用住宅地区、普通住宅地区 |
地積 | B | C |
1,000㎡以上 3,000㎡未満 | 0.90 | 100 |
3,000㎡以上 5,000㎡未満 | 0.85 | 250 |
5,000㎡以上 | 0.80 | 500 |
(注)
1 上記算式により計算した規模格差補正率は、小数点以下第2位未満を切り捨てる。
2 「三大都市圏」とは、次の地域をいう。
イ 首都圏整備法(昭和31年法律第83号)第2条((定義))第3項に規定する既成市街地又は同条第4項に規定する近郊整備地帯
ロ 近畿圏整備法(昭和38年法律第129号)第2条((定義))第3項に規定する既成都市区域又は同条第4項に規定する近郊整備区域
ハ 中部圏開発整備法(昭和41年法律第102号)第2条((定義))第3項に規定する都市整備区域
規模格差補正の適用要件
規模格差補正の適用要件は下のように整理されています。
戸建開発素地の鑑定評価
規模格差補正は、不動産鑑定評価における開発法を簡略化する流れの中で成立したものです。開発法とは、開発スケジュールを組み立てて、販売収入の現在価値(B)から造成支出の現在価値(C)を控除することで、価格時点の土地価格(A)を求めるものです。戸建開発素地は開発業者が典型的な需要者になることから、合理的で説得力のあるやり方といえます。
したがって、収入が多く支出が少なく見込まれる土地価格は高くなりますし、その逆であれば安くなります。
例:路線価が低い地域の土地 例:道路(潰れ地)割合が大きい土地 | 収入が小さいと土地価格は安くなる 例:起伏や高低差が大きく造成費が嵩む土地 | 支出が大きいと土地価格は安くなる
規模格差補正のメリットとデメリット
規模格差補正は、補正率が面積のみに依存するため、実際には道路(潰れ地)負担が生じないような土地にも適用できるというメリットがあります(下図(3))。その反面、適用要件が指定容積率や地区区分によって画一的に定められていることから、実際には道路(潰れ地)負担が生じるであろう土地に対して適用ができないこともある、というデメリットもあります(下図(1))。
(1)鑑定有利 | (2)状況次第 | (3)規模格差補正有利 |
①1,000㎡(500㎡)未満のミニ開発素地等 ②住宅地域へと移行が進む中小工場地区内の土地、 ③指定容積率は400%(300%)以上だが基準容積率が200%前後の土地 が含まれます。このような土地は鑑定評価で救済することが可能です。 | 本来大幅に減額補正されるべき「道路負担が必要な開発素地」にも関わらず、規模格差補正が適用できない部分です。 ④路線価が安い地域にある土地 ⑤高額な造成費が見込まれる土地 ⑥道路(潰れ地)負担が大きく見込まれる土地等では鑑定評価が有利になる場合もあります。 | 規模格差補正の適用が可能な、開発道路が必要な開発素地。同補正が本来予定している部分といえるでしょう。基本的には規模格差補正が適用でき、かつ有利であるためこれを適用の上評価することになります。ただし、いわゆるようかん切り開発や路地状開発が行われる範疇です。広大地補正が適用できなかった部分であり、規模格差補正の登場によって新たに有利な評価が可能になった部分です。 |
規模格差補正と鑑定評価~評価額比較
(1)鑑定有利(規模格差補正が適用できないが鑑定評価で救済可能)のケース
①1,000㎡(500㎡)未満のミニ開発素地
規定面積(1,000㎡または500㎡)を1㎡でも下回ると、規模格差補正の適用は出来ません。下図のような三大都市圏にある480㎡(路線価10万円)の土地について、通達評価と鑑定評価(開発法適用)との比較をしてみました。この例では20%程度の差が生じています。なお、グラフ中「参考値」は本件評価対象地に(本来適用できない)規模格差補正の式を当てはめた評価額であり、鑑定評価額と近似しています。
そもそも、面積基準を画一的な方法で定めると、下図のようにより大きな土地がより安くなるという矛盾が生じることがあり、これは評価通達の欠点といってもいいでしょう。まさに「この通達の定めにより難い場合の評価(評価通達6)」に該当すると考えられ、①のようなケースでは、積極的に鑑定評価を検討すべきでしょう。
②住宅地域へと移行が進む中小工場地区内の土地
③指定容積率は400%(300%)以上だが基準容積率が200%前後の土地
このような土地について、通達評価(規模格差補正適用不可)と鑑定評価(戸建分譲想定)との比較が下です。グラフ中「参考値」は本件評価対象地(500㎡)に(本来適用できない)規模格差補正の式を当てはめた評価額です。
(2)状況次第(規模格差補正を適用できるが鑑定評価が有利)なケース
④路線価が安い地域にある土地
造成費は全国ほぼ一定である(少なくとも路線価ほどの違いはない)ため、路線価が安いほど鑑定評価が有利になります。横軸が路線価です。縦軸は、通達評価(規模格差補正適用済)と鑑定評価(戸建開発想定)との相違{(1-(鑑定評価額÷通達評価額)}で、上に行くほど鑑定評価が有利という意味です。0.0%で同額になり、その下は通達評価が有利ということになります。路線価が5万円を下回るような地方の大規模地が、通達評価額ではなかなか売れないことがありますが、理由のひとつがこれでしょう。市場価格をより正確に反映させられる鑑定評価が有利になります。
⑤起伏や傾斜が著しく高額の造成費が見込まれる土地
評価通達においては、規模格差補正と宅地造成費控除との重複適用は可能です。しかし、宅地造成費は財産評価書によって画一的な基準で定められているため、実態を反映しない場合もあります。鑑定評価では、現況を基にして宅地造成費を積算し、これを計算式に入れて計算を行うため、造成費が高いほど評価額は低くなります。
⑥道路(潰れ地)負担が大きく見込まれる土地
鑑定評価では、収入の現在価値から支出の現在価値を控除して価格を求めます。したがって、道路(潰れ地)率が高いということは、裏返せば有効宅地部分=販売可能部分の割合が小さくなり、収入が小さくなるため、評価額は下がることになります。
まとめ
道路の負担が生じそうな戸建分譲素地について、鑑定評価を検討すべき土地は下のようにまとめられます。上の3つは規模格差補正が適用できなくても、鑑定評価での救済可能性がある土地です。下の3つは規模格差補正が適用できたとしても(それが時価を上回る可能性があり)鑑定評価を検討すべき土地です。
・1,000㎡(500㎡)未満のミニ開発素地
・住宅地域へと移行が進む中小工場地区内の土地
・指定容積率は400%(300%)以上だが基準容積率が200%前後の土地
・路線価が安い地域にある土地
・高額な造成費が見込まれる土地
・道路(潰れ地)負担が大きく見込まれる土地
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