都市計画法は、都市の健全な発展と秩序ある整備を図るために、必要な手続きや制限等を定めた法律です。ここでは、相続税土地評価を行う際に必要な知識について、説明をしていきます。
区域区分
都市計画法では、中心的な市街地とその周辺地域を一体の都市として総合的に整備、開発、保全をしていく必要がある区域を都道府県が指定することとされており、こうして指定された区域を「都市計画区域」といいます。良好な都市環境を作るという観点から、必要があれば都市計画区域の中を「市街化区域」と「市街化調整区域」に分けて定めることもできます。「市街化区域」とは、既に市街地を形成しているところと、おおむね10年以内に優先的に市街化を進めるべきところです。「市街化調整区域」は、市街化を抑制すべきところです。市街化調整区域の中では、農林漁業用の建物の建築や、一定規模以上の計画的開発以外は許可されません。市街化区域と市街化調整区域に分けることを「区域区分」または「線引き」といいます。区域区分をするかどうかは、都道府県の判断で、特に必要がないと考えれば行わないこともできますが、既成市街地、近郊整備地帯に含まれる地域では、必ず定めなければならないことになっています。(出典:国交省関東地方整備局から抜粋)相続税評価では、農地や雑種地の評価の際などに必要な知識です。
準都市計画区域は、積極的な整備または開発を行う必要はないものの、そのまま土地利用を整序し、または環境を保全するための措置を講ずることなく放置すれば、将来における一体の都市として総合的に整備、開発および保全に支障が生じるおそれがある区域について指定します。 都市計画区域は、都市計画税などを徴収し、それを財源に、道路や公園、下水道など(各種都市施設)の整備を行ったり、土地区画整理事業等の市街地開発事業を行ったりするのに対し、準都市計画区域は、「保全」の意味合いのみのため、そのようなことを行うことはできません。(出典:福井県「準都市計画区域の概要について」から抜粋)
地域地区
主に都市計画区域内の土地について、用途や利用の程度について定める枠組みが「地域地区」です。都市計画法第8条に21種類が規定されていますが、代表的なものは用途地域、高度地区、防火地域又は準防火地域、風致地区、生産緑地地区などです。市役所等にある都市計画図を見ると、この地域地区や上の区域区分等の内容について知ることができます。近年では、都市計画図をインターネットで閲覧できる自治体も増えてきました。通常、役所が提供する情報は最新のものであるため、相続税土地評価のための調査では相続時点においても規制は同様であったかどうか、確認することが必要です。相続税評価では、地積規模の大きな宅地の評価(規模格差補正)等で必要になってきます。
【参考図】都市計画図の例(出典:横浜市行政地図情報提供システム)
用途地域
地域地区のひとつで、下の13種類があります。
1.第一種低層住居専用地域 | 低層住宅のための地域です。 小規模なお店や事務所をかねた住宅や、小中学校などが建てられます。 |
2.第二種低層住居専用地域 | |
3.第一種中高層住居専用地域 | 中高層住宅のための地域です。 病院、大学、500㎡までの一定のお店などが建てられます。 |
4.第二種中高層住居専用地域 | |
5.第一種住居地域 | 住居の環境を守るための地域です。3,000㎡までの店舗、事務所、ホテルなどは建てられます。 |
6.第二種住居地域 | 主に住居の環境を守るための地域です。 店舗、事務所、ホテル、カラオケボックスなどは建てられます。 |
7.準住居地域 | 道路の沿道において、自動車関連施設などの立地と、これと調和した住居の環境を保護するための地域です。 |
8.田園住居地域 | 農業と調和した低層住宅の環境を守るための地域です。住宅に加え、農産物の直売所などが建てられます。 |
9.近隣商業地域 | まわりの住民が日用品の買物などをするための地域です。 住宅や店舗のほかに小規模の工場も建てられます。 |
10.商業地域 | 銀行、映画館、飲食店、百貨店などが集まる地域です。 住宅や小規模の工場も建てられます。 |
11.準工業地域 | 主に軽工業の工場やサービス施設等が立地する地域です。 危険性、環境悪化が大きい工場のほかは、ほとんど建てられます。 |
12.工業地域 | |
13.工業専用地域 | 工場のための地域です。どんな工場でも建てられますが、住宅、お店、学校、病院、ホテルなどは建てられません。 |
都市計画道路
都市計画道路とは、都道府県や市町村が都市計画法を使って定めた、将来造る予定の道路といえます。現行の道路を広げる場合もあれば、住宅地域等を突っ切る場合もあります。造られ方の手順としては、はじめに①計画決定が行われ、ついで②事業決定、そして③工事です。計画決定がされたとはいえ、必ずしも事業決定や工事という次のプロセスに進むとは限らず、見直しが行われ計画の変更・廃止が行われる場合も少なくありません。中には、計画決定後、次のプロセスに進まないまま数十年も経過している例もあります。
計画決定や事業決定がなされると、それぞれ必要に応じて建築制限が発生します。このため、評価対象地の一部で都市計画道路の計画決定が行われている場合は、規定の減額調整を行う事が出来ます。
計画決定 | 第53条・54条 | 都市計画法建築物の建築をしようとする者は、国土交通省令で定めるところにより、都道府県知事等の許可を受けなければならない。知事は、一定の要件を満たすなら、その許可をしなければならない。 |
事業決定 | 都市計画法第55条 | 都道府県知事等は、前条の規定にかかわらず、第53条第1項の許可をしないことができる。 |
開発行為
開発行為とは、建築物の建築等を目的とした「土地の区画形質の変更」をいいます。市街化区域においては1,000㎡(三大都市圏の既成市街地等は500㎡)以上の、市街化調整区域においては原則的に全ての開発行為について規制対象となり、特定のものを除き都道府県知事等の許可が必要になります。
都市計画区域 | 線引き都市計画区域 | 市街化区域 | ※開発許可権者が条例で300㎡まで引き下げ可 | 1,000㎡(三大都市圏の既成市街地、近郊整備地帯等は500㎡)以上の開発行為
〃 | 〃 | 市街化調整区域 | 原則として全ての開発行為 |
〃 | 非線引き都市計画区域 | ※開発許可権者が条例で300㎡まで引き下げ可 | 3,000㎡以上の開発行為|
純都市計画区域 | ※開発許可権者が条例で300㎡まで引き下げ可 | 3,000㎡以上の開発行為||
都市計画区域及び準都市計画区域外 | 1ha以上の開発行為 |
なお、「土地の区画形質の変更」とは、土地の「区画の変更(主に道路や水路等を造る)」・「形(けい)の変更(一定規模を超える切土・盛土)」・「質の変更(主に地目変更)」をひとまとめにした言葉なので、いずれかを行うならばそれは開発行為に該当します。開発行為が行われると、自治体の担当部署に開発登録簿が保管され一般の閲覧に供されます。ここに記載された開発面積や添付されている開発図面は、評価地積や評価単位の確定の際に参考になるため、取得するように心がけましょう。
◇開発許可申請の要否
不要 | 必要 | 必要 | 必要 | ||||
|NO | | ↑|YES | | ↑|YES | | ↑|YES | | ↑||||
規定面積以上 | YES | --→区画の変更 | NO | --→形の変更 | NO | --→質の変更 | 不要 NO | --→
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