設例
下のように、庭内神し敷地や墓所と宅地とが隣接している場合、その評価単位はどのように考えるべきでしょうか。
別評価すべきという考え
墓所は相続税法第12条のいわゆる「非課税財産」です。ところで、財産評価基本通達はその前文で「相続税及び贈与税の課税価格計算の基礎となる財産の評価に関する基本的な取扱いを下記のとおり定めたから、」とあり、同通達はあくまでも「課税価格計算の基礎となる財産」を対象としています。したがって、非課税財産である墓所はそもそも同通達の対象外であり、別評価するのが妥当とも言えます。
一体評価すべきという考え
下記を根拠に、一体評価が妥当(庭内神し敷地・墓所部分のゼロ評価は面積按分計算で反映)であるという考え方ができます。これは、拙著「評価単位判定辞典」で採用している考えです。
・「一体として利用されている一団の土地が2以上の地目からなる場合には、その一団の土地は、そのうちの主たる地目からなるものとして、その一団の土地ごとに評価するものとする」(評価通達7ただし書き)
・「次の各号に掲げる地目は,当該各号に定める土地について定めるものとする。この場合には,土地の現況及び利用目的に重点を置き,部分的にわずかな差異の存するときでも,土地全体としての状況を観察して定めるものとする。」(不動産登記事務取扱手続準則)
また、財産評価基本通達は庭内神し敷地や墓所等の非課税財産を対象としていないからそもそも別評価、という見解もあります。しかし、相続税法はその第22条で時価評価を求めているにもかかわらず、宅地部分について庭内神し敷地単位や墓所単位が欠落した形状で評価していいのか、という問題も生じます。宅地を売却する際には、特に庭内神しについてその敷地をも含めて一体として売買の対象になり、一体とした形状を前提に価格が成立するのが通常だからです。つまり、財産評価基本通達が庭内神し敷地や墓所等の非課税財産を対象にしているのかという論点と、時価に影響を与える評価単位の論点とは、別であるとも言えます。
争訟事例(東京地裁平成24年6月21日判決(確定))
本件土地の一部を構成する庭内神し敷地の評価を巡る争いで、主論点は、同敷地について相続税法第12条に規定する非課税財産に該当するか否かです。本文で評価単位に関する言及は確認できませんが、別添資料の計算式で一体評価されていることが伺われます。具体的には、不整形地補正率の計算において、庭内神し敷地を含む本件土地全体が「不正地の地積」として、想定整形地地積から控除されています。また、別記注書には「本件敷地(庭内神し敷地)21㎡を控除した結果、土地の価額(総額)は…4,490,472円減額され…」とありますが、この減額値の単価は全体の単価と同じ213,832円です。
210,000円(正面路線価)✕0.99(奥行価格補正)=207,900円
207,900円+210,000円(側方路線価)×0.99(奥行価格補正)✕0.03(側方加算)=214,137円
214,137円+205,000円(裏面路線価)×0.99(奥行価格補正)×0.02(二方加算)=218,196円
218,196円✕0.98(不整形地補正※)=213,832円
213,832円✕629.5438㎡(注2)=134,616,609円
(注2)551.73㎡+116.14㎡✕67/100=629.5438㎡(本件土地のうち庭内神し敷地部分の面積を控除したもの)
※不整形地補正率
26.00m(想定整形地間口)×32.75m(想定整形地奥行)=851.50㎡(想定整形地地積)
(851.50㎡-688.87㎡(不整形地の地積))÷851.50㎡=19.09%(かげ地割合)
0.98(表の補正率)×1.00(間口狭小補正率)=0.98 ←不整形地補正率
1.00(奥行長大補正率)×1.00(間口狭小補正率)=1.00
本争訟事例は、庭内神し敷地単価や不整形地補正率計算から一体評価が行われていることが強く推測されますが、想定整形地がどの様に作図されているのか(作図上庭内神し敷地が含まれているか)等、一部不明点は残ります。
まとめ
一体評価という考えも、別評価という考えも、どちらもそれぞれ説得力があるように思えます。また、庭内神し敷地や墓所の規模や、隣接地との位置関係によって判断を変える必要があるのかもしれません。さらに、庭内神しと墓所とを同様に考えていいのかという疑問も残ります。祠と墓石とでは、除去・移設に対する心理的負担は必ずしも同様でないからです。これらを考え合わせると、本論点は思った以上に厄介だといえるでしょう。
「評価単位判定辞典」の次回改訂の際には、これらの点も十分に考慮に入れるつもりです。
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