【使用貸借の目的地】必ずしも自用地評価なのか(関裁(諸)平11第68号)

①評価対象地の状況と争点

 評価対象地は使用貸借により、昭和12年頃から学校のグラウンド及びテニスコートの一部として使用されています。   使用借権の目的土地は、当該権利の性質にかんがみ自用地評価が行われるのが通常です。しかし、返還が容易ではない本件のようなケースでは、何らの減額調整も無い自用地評価が適切かどうかが論点になっています。

②原処分庁主張要旨

 原則的に使用借権に経済価値を見出すことは出来ないため、その目的となっている土地は自用地評価されるべきだが、本件は特殊事情があるため何らかの考慮はされるべき。ただし、請求人主張のように借地権が存在するのと同等に考えるのは過剰であり、評価通達87を準用して評価されるべき。

評価額=自用地の価額-(自用地価額×40/100※ア×1/2※イ
※ア相続税法第23条に定める「残存期間の定めのないもの」としての100分の40を適用
※イ評価通達87に定める地上権的賃借権以外の賃借権の2分の1

③請求人主張要旨

 相当に特段の事情が無い限り土地の明け渡しが見込めず、借地権以上の権利が存在するといえる。本件土地の価額は限りなくゼロに近いものと言わざるを得ないが、少なくとも底地割合(1-地権割合)を乗じて評価すべきである。

④審判所判断要旨

 原処分庁支持。著しい使用制約は認めながらも、本件土地の所有権が第三者に移転された場合に、(使用者は)その第三者に対してその使用権をもって対抗することができないから、借地権と同様な交換価値を使用権者に帰属させるものではないとしています。

⑤まとめ

 土地の評価は、「不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額(評価通達1)」をもって行われるので、本件の使用借権に実効性のある特約が無いなら、その理屈は妥当といえるでしょう。

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